混声合唱とピアノのためのソナタ第2番 について③ 第1楽章について
こんばんは!
本城先生率いるパナソニック合唱団さん委嘱作品
混声合唱とピアノのためのソナタ第2番 について、前回の②では、アルマンドの特徴とソナタ形式について少し説明しました。
今回③では、第1楽章について、詩をどのように扱い、どのような音を書いたかという話を、作曲手順を含めて書き表すことに挑戦したいと思います。
実際の詩を掲載しながら話を進めますが、楽譜は登場させません。また、ある意味ネタバレ?のような感じになってしまうかもしれませんが、拙い文章ですがお話しさせていただき、少しでも興味を持って聞いてくださる方が増えたらと思っております。
つきましては、ぜひ、今年2020年9月5日(土)のパナソニック合唱団さんの定期演奏会にお越しいただき、演奏をお聞きいただければと思います。(7月12日(日)に学生さんとのジョイントコンサートでもいくつかの楽章を演奏いただきます。)
さて、詩ですが、全4楽章、八木重吉さんの「秋の瞳」から選ばれ、第1楽章では「おほぞらの 水」を取り上げました。
今回の創作は、過去の兄弟作品と同様、声楽作品で器楽の形式を応用するという観点から、「4楽章分の音楽(緩・急や曲想や形式など)の大まかな構成」を先に考え、その後に、それらに適合した詩を「秋の瞳」の中から選び出すというプロセスで作曲をしています。
詩を選ぶときの感覚は、ここの文を第1主題にしよう(できるかなあ)とか、こんなイメージの音形を書こう(書けるかなあ)という、形のまだないモヤモヤしたものをつかむような感覚と言えるかもしれません。
ということで、大雑把な言い方をすると、「音楽→詩」の順での詩の選択ということになりますが、詩を選び出す瞬間には、具体的な音はまだ記譜されていない状態です。
それでは、実際の詩を以下に載せます。
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おほぞらの 水
おほぞらを 水 ながれたり
みづのこころに うかびしは
かぢもなき 銀の 小舟、ああ
ながれゆく みづの さやけさ
うかびたる ふねのしづけさ
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ソナタ形式ということを考え、主題を2つ導き出す意図があることを念頭におき、選びました。
1行目を第1主題
2行目を移行部
3行目を第2主題
4・5行目を展開部
として使用する(できるのではないか?)と想定し作曲しました。
様々な作曲方法があるとは思いますが、今回は、3行目の最後までを提示部とし(1かっこでリピート、2かっこで展開部へ、という流れで)、展開部以降は繰り返さない(リピート記号なし)タイプの形式で書きました。
アルマンドの中庸程度のテンポ・流れるような曲想と 詩の1行目を始め全体の浮遊するイメージが相まって、水の流れを16分音符の動きでそれらを具現化しています。その流れの音形は、展開部でも登場し、曲全体を占める割合が非常に多いです。
この詩を、誰かに向けた特定の強いメッセージと捉えるよりは、空を見上げたときの「印象」を描いているという方向性で捉えるのが自然ではないでしょうか?そのような観点で作曲を進めました。確たる形式を持ち合わせているため、「節度を持った印象派」とでもいいましょうか。
第1主題は、F リディアンスケール を基調として作曲しています。リディアンスケールのなんともいえない浮遊感がぴったりかと思ったわけです。クラシック音楽ではリディア旋法という言い方がありますが、旋法と音階(スケール)という言葉には違いがあり、今回はあえてスケール(音階)という言葉で書き進めます。(※「旋法」は音階という意味に加え、いわゆるメロディの扱い方≒節回し も関係するためより狭義。)
提示部は、第1主題から移行部の終わりまで、多層的に表現された合唱(ボカリーズを含む)とピアノのやりとりが聞きどころの一つです。移行部では第1主題から導かれた音楽が展開されていきます。
第2主題は、未解決の和音や、「ドミナントセブン(ナチュラル9・シャープ11・ナチュラル13)」の響が決め手になっています。
展開部は3つの部分に分かれています。
第1部分は、提示部の第2主題の展開です。キーとなる言葉が合唱の各声部とピアノに散りばめられて進行します。
第2部分は、16分音符(流れの音形)の展開です。合唱の各声部が二手にわかれ、それぞれの下パートはハーモニーを、上パートはフガートの形で16音符が現れます。特筆すべきは、合唱の傍に演奏されているピアノパートで、使用される音階の指定された即興(あるいは即興的)で演奏される部分が準備されています。これが自由な「流れ」を目指しています。
第3部分は、詩の4〜5行目の言葉を使った新しい動機による部分と第1・2部分の混合です。
再現部は、ただの再現(繰り返し)ではありません。詩としては、展開部で全て使用しており、作品としてもそこで終わらせることも可能ですが、再現部を音楽的にどう扱うかということが、正に、器楽的な処理あるいは展開において「音楽作品における再現部」として意味を持たせたかったところです。ここは、説明なしで、聞いてみてのお楽しみ、としておきましょう。
さて、今回初めて、詩と言葉だけを使って(楽譜は用いずに)作品の説明をしてきましたが、いかがだったでしょうか?
ぜひ、少しでも多くの方に、今年2020年9月5日(土)のパナソニック合唱団さんの定期演奏会にお越しいただき、演奏をお聞きいただければと思います。
パナソニック合唱団さんのHPには、演奏会情報がいつアップされるのでしょうか?楽しみです!みなさんもチェックしてみてください!
パナソニック合唱団さんのHPはこちら
それでは、今日はこの辺で。
次回は第2楽章についてお話ししていきたいと思います!
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